※この物語は フィクションです 登場する人物、名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
第1章 青い男
赤羽の駅周辺は東京にしては、どことなく俺の地元の大阪に雰囲気が似ている。
大阪の京橋などに、朝から立ち飲みで当たり前のように酔っ払ってそれがあたかも仕事のように酒を呑んでいるおっさん、前髪がやけに長い年齢不詳の女、シワシワのスーツをきた赤ら顔の童顔の20代。
仕事休みの日にそこで朝から酒を呑んでいると、なぜか自分は許されているような気がしてよく通っていた。
そんな雰囲気に似てる赤羽にはよく飲みにくる。
俺は東京の板橋にある美容室で働いている。
スタイリストとは名ばかりで新規もリピーターもつかず、店長からもっと売り上げあげろと、嘆きの顔でため息をつかれる日常だ。
このご時世だから、パワハラで大声で怒鳴られることもない比較的冷静に「もう少しお客様とのコミ力上げて、客の満足度上げようよ」とひきつった笑顔で言われると俺の胸の内部から腐った水のようなものが流れる。
はい、すいませんと頭を下げて、店長が控え室に入っていくのを横の鏡で確認して舌打ちした。
その鏡に映った俺の姿がやけに青く見えたライトのせい?
その時、予約のお客が入ってきたことを知らす呼び鈴が聞こえたので店長が出てきて、アニメの主役のような笑顔で『お待ちしておりました』と声を張り上げていた。
俺が生まれたのは東京の八王子だ。
そこに小学生までいたが親の都合で大阪の南の市人口80万そこそこの市に引っ越した。
言葉が違うとよく同級生にいじられて、大阪に馴染めない俺は田舎もんがうるせーよと心の毒を感じながら幼少期を過ごした。
地元の高校を卒業して一緒にバイトしていた友達が美容学校に入るというので俺も何も考えずについていった。
人の髪を綺麗にしたいなどどいう強い気持ちもない俺はとりあえず国家資格をとって地元の美容室で働いていた。
もっぱら高齢者の白髪染めをやって 休みの日は朝から酒を呑むそんな退屈な生活にうんざりしていた。
俺は生まれた東京に行ってみたいと思った高齢の両親からなけなしの貯金を奪い取って東京にやってきたのだ。
38歳もすぎて東京?
声なき声が聞こえた東京の生活はそんなに甘くないと偉そうな肉好きがどこかで言っていたように、青山、原宿のような山手線内の美容室に入れるわけもなく4店舗目の面接で板橋の店舗に入れたのは俺にとってはラッキーなことだった。
今日も俺の指名の客は2名、専ら店長のアシスタントライトの当て方をもっと考えてやってくれとか、ヘルプに入るタイミングが遅いとか今日も最後のミーティングで言われた。
腐って飲みに行こうと思って赤羽駅を降りたのは、夜9時を少し過ぎた頃だった。
いつもの店に足を向けていると、俺がきてからずっと閉店になっていた薄暗い店に今日は灯りがついていた。
BARという薄暗いライトが目に入った。
店ができたんだと入り口を見ると、赤い炎がゆれている?
赤い何かが揺らいでいるように見えたそれが何なのかもう一度、目を凝らして見るとすりガラスの向こうに赤い服をきた黒髪の女が笑顔で立っていた。
俺はなぜかその女を近くでみたいと思わず店のドアを開けていた。
店の中は薄暗く、お香のようないい香りがただよってきた黒髪の女は、「いらっしゃいませカウンターにどうぞ」と俺を促した。
何飲みますかと静かに聞かれたのでかすれた声で「ハイボールでお願いします」と答えた。
なぜかわからないが関西弁がでないようにしゃべっていた。
酒を作るその女に気づつかれないようにその女の顔をよくみるとほとんど化粧してないの顔に真っ赤な口紅だけをつけていた。
それがかえって変な色気を漂わせていた。
ハイボールがいつの間にか目の前に置かれていたのと同時に「どこからいらしたのですか?」と、湿気を帯びた声で聞かれた。
東京のことを聞かれてよくわからない面倒さから大阪から東京に来て1年たったこと、美容師をやっていて、仕事帰りであること聞かれてもいないことを俺はべらべらと喋っていた。
もう喋ることもなくなった俺は気まずい時間を打ち消すようにグラスの酒を喉に流し込む少しの沈黙を確認してからその赤い服をきた女は言った「美容師さんなんですねお客さんのような美容師さんに髪さわってもらったら気持ちよさそうですね」
ライトに光った赤い口からもれたその言葉を聞いた瞬間、俺の下半身にドクっと血が流れたのがわかった。
それから、何か店で嫌なことがあると、そのBARによく通うようになった。
その赤い女の名は妖香といった・・・・

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