俺の毎日はそれからも相変わらずの日々だった
新規の顧客が増えるでもなく、給料分は働いてくれよーの店長の嫌味も相変わらずだったが空き時間にふっと考えるのは、妖香のことだった
あの日から、俺は妖香の店に行き、妖香を抱いた
妖香は私のことを好き?などと、10代、20代が日常につぶやく陳腐な質問をしてこない
それがかえって俺には愛おしくて苦しくて、自分が何を思っているかなど余計に伝えることができなかった
妖香は俺にとっては特別な女になっていった
それが好きという感情かどうかなどは俺にはわからなかった
愛なんで言葉自体、虚しさでしかない
しかしその日は珍しく、朝から妖香の顔が浮かんでくる
あいつは俺のことどう思っているのか
もちろん妖香の気持ちは聞いたことがない
聞いてみようと思った
答えてくれるのか?
そんなことを考えて にやけている顔が電車の窓にうつった
なぜか俺の顔が青く見えたような気がした
赤羽の駅についたのは9時半頃だった
妖香の匂いを思い出すと下半身と胸が熱くなってきた
はやく妖香を抱きたい、そして抱けると簡単に思っていた
門を曲がると妖香のBARだ
曲がった瞬間 暗い?と思った、
なぜか俺の細胞がざわついて早足になった
店はシャッターが閉まっていた、「まだ10時前やないか」と日頃喋らない関西弁で意味のない言葉をつぶやいていた。
店に電話してみたがコールが終わることがない
LINEの妖香のアイコンを探してみるがなかなか見つからない
日頃からLINEなどやり取りする仲でもないことを今さら知らされて自分に腹が立っていた。
なんとか見つけたBARの写真のLINEに「店どうしたの?」と打つ、
美容師のクセにこんなに指がスムーズに動かない
焦りの気持ちが広がってきて胸を痛めつけた
その夜は当然、意味がわからない消化できない気持ち悪さに眠りが浅かった。
寝れたのか、一晩中起きていたのかもわからない状態だ。
本来なら昨晩、妖香の上で果てて、爆睡している俺なのに硬くなった下半身を意識しながら携帯を見た
俺が妖香に送ったLINEを見ると、既読になっていない。
朝、ベットから起きる辛さよりも妖香がどうしてるかが気になる気持ちが消化できない
何かが胸につかえて起き上がることができず意味もなく天井を見つめていた。
仕事終わりに店に向かう、もしかしたら店が開いていて、昨日はごめんねといつもの笑顔で妖香が立っているかもしれないという淡い願いは音と色のないシャッターの前であえなく打ち砕かれていた
毎日行ってみるがグレーのシャッターが二度と開くことはなかった
3回送ったLINEも全く既読にならない
妖香はどこに消えたのだろう?
無事か、元気か?
誰かこの問いに答えて欲しいと上を向いても東京の薄暗い夕方の闇に答えはない
俺のことをどう思って消えたの?
お前にとって俺はなんだったんだよ
自分は妖香のことを欲望のはけ口していたくせに・・・・
同じ思考がぐるぐる回る
こんな時だけやけに頭だけが冴えて、強い酒をどんなに呑んでも酔えない
鏡に映る俺の青い顔をみると尚更 妖香の赤が思い出される
それから俺は二度と妖香に会うことはなかった
つづく

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